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映画レビュー 『ゴッホ 真実の手紙』編

突然ですが、私は映画が大好きです。

どんなジャンルでも基本的に見るのですが、今回はゴッホに関してのドキュメンタリー映画の感想を書きたいと思います。

 

映画にしては少し短いものですが、主演はベネディクトカンバーバッチで、ゴッホが実際に弟のテオに送り続けた手紙の中の文章を引用する形で、物語が進んでいます。

 

ご存じの方も多いかもしれませんが、ゴッホの人生は本当に山あり谷ありでした。

彼が生きている間に名声を得ることはなく、特に大きな評価を得ることもなく、恋に破れ、親にも理解を得られず、精神を病み、耳を切り取るなどの自傷行為をしたり、精神病院に入院したり、ゴーギャンと共同生活をしたと思えば3か月ほどで破綻し...実に劇的な人生でした。

生涯彼を信じ、理解し、支えていたのは弟のテオのみであったとすらいえると思います。

 

そんな、ゴッホが愛し、またゴッホを愛していた兄弟のやり取りでつづられる、ゴッホの一生ですが、手紙の文言をベースにしていることもあり、ドキュメンタリーなのに叙情的で、哀愁があり、詩的で豊かに仕上がっていました。全体を通して映画がまとっている「雰囲気」がとても味わい深く素敵だったのが印象的です。

 

また、主演のベネディクトカンバーバッチが最高にいい。

もともと私はBBCの「Sherlock」の大ファンなのですが、感情の起伏が激しかったり、起伏のある人生を歩む人物を演じるカンバーバッチは最高に輝いています。彼の演技力で、よりゴッホ像が出来上がった人も、映画の鑑賞者の中には多かったのではないかと思います。

 

ゴッホの生涯は本当に一本のドラマや映画にするには山も谷もありすぎるほど劇的で激しく、暗く、また悲しく孤独なものでした。と、同時に影にはいつも弟のテオがいたのです。そんな兄弟愛を感じられ、ゴッホが不憫になると同時にこの兄弟に胸が温まりホッとするような、なんとも不思議な感情を抱きました。

 

ゴッホの絵は重厚で色彩豊かで、エネルギーのこもった動きのある作品が思い浮かびますが、実際にそれを書いていた彼自身は常に希望と絶望を繰り返していたのだという事実に、なんとも言えない気持ちにさせられました。

命を削り、表現し、自分のエネルギーをすり減らしてまで作品を残し続けようとした、それがひしひしとつたわってくる作品でした。

 

ゴールデンウィークに、ぜひ。