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美術本読書記録『江戸の女装と男装』

今回は日本最大級の浮世絵所蔵数を誇る、太田記念美術館が監修した『江戸の女装と男装』という本をお勧めしたいと思います。

江戸の女装と男装

カバーも中身もカラフルで何ともおしゃれなこの本は、タイトルの通り、

浮世絵を通じて江戸の女装と男装の在り方についてみているものです。

 

私が大学でジェンダー学を学んでいたこともあり、この手のテーマは好んで読んでいたのですが、浮世絵鑑賞の切り口の一つとして非常に面白く、またとっつきやすいものだと思いました。

 

ぱっと思い浮かぶ日本の伝統の中の異性装といえば、歌舞伎や能などの舞踊の中で役者さんがするものだと思いますが、実はそれ以外にも、一般の庶民の間でも、江戸時代にはお祭りなどの行事を通して異性装をすることがよくありました。

 

例えば吉原で働いていた女芸者たちは、吉原俄というお祭りの際に、観衆を楽しませるために男性の恰好をして町を練り歩き、演目を披露していたようです。本の中では当時の「吉原細見」という吉原のガイドマップのようなものと浮世絵の中に見られる役者の名前とを照らし合わせていたりと、細かな照合もなされています。

 

男性の女装でいえば、歌舞伎役者による演目について描いたものも多くみられました。

 

この本の良いところは、なんといってもそれぞれの絵の印刷の明瞭さと大きさ。美術館の図録のように大きく、見やすく、絵画鑑賞を自分の手の中でしている気分になれます。また解説も多すぎず少なすぎず、コラムで詳しい知識もはさみつつ内容が進んでいきます。

本の中身もとにかくおしゃれでカラフルで、読むというより眺めるに近い形で最後のページまで楽しみ切ることができます。

 

コロナのおうち時間、読書や美術鑑賞で自分の感性を豊かにしてみるのはいかがでしょうか