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美術に関する展示会、書籍などあれこれ。

蛇とメデューサ

私が大好きな絵の一つに、ルーベンスの「メデューサの頭部」があります。

 

ギリシア神話主題の絵の中ではよくある題材ですが、

ルーベンスの作品は凄みが違います。

 

おどろおどろしい暗い空を背景に、薄い硫黄のような色の、自然の中にあるには不自然に平らな岩の上に、ゴロっと転がる白い頭部。

メデューサの顔は血の気が消え、その目は見開かれたまま。

メデューサはすでに死んでいるというのに、その頭部の蛇が元気にうねうねと躍動感たっぷりに動いている、不気味な対比。

怖いのに目が離せなくなるような凄みと迫力があります。

 

なんでこんなおどろおどろしい絵の話からこの記事を始めたかというと、最近蛇を見に行ったから、という何とも安直な理由です。

緊急事態宣言の発出の前に、友達と蛇カフェなるものにいってきました。

もともと爬虫類は大好きですし、蛇もかわいいし何なら飼ってみたい~と思ってるくらいなので、ワクワクしながら行ってきました。

 

それはまあ、なんとも不思議な空間でした。

お店に入ると一応カフェなので飲み物が出てくるとともに、その場で指名した蛇が入ったケースをテーブルの上に置いてもらい、その蛇を見ながらお茶を飲む。

私たちが選んだのはアルビノのアオダイショウで、活発に活動している時間帯だったのか、ずーっと元気に動いてくれてました。

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さらに追加料金を払えば好きな蛇二匹を実際に触ることもできて、首にも巻かせてもらいました。

 

実際に蛇を持ってみると、動くたびに体の筋肉が波打って動いているのがじかに伝わります。首に巻いているときもそう。収縮し、力が入り、そこの力が抜けると別の部分が収縮する。その時の筋肉の硬さと言ったらすごいです。

 

あの長い体を、あんなに細い胴体で支え、立ち上がったりうねうね動くわけですから、全身筋肉なのは当たり前なのですが、ただ知識として知っているのと触ってみるのとではえらい違いでした。

 

そこで、ルーベンスのあのメデューサが頭に浮かびました。

あの躍動感。立ち上がっている蛇たち。渦巻いている蛇たち。

ルーベンスはこの筋肉の動きを描きたかったのかもしれない、とふと思いました。もちろん知識としてあんな動きを蛇たちがするのは知っていました。そしてルーベンスが蛇たちの動きを多少誇張して瞬間を切り取っているのも想像していました。

 

でもそう描きたくなるのもわかります。触って感じるあの筋肉の動き。

どんな動きだってどんな体勢だって可能にしそうなあの収縮。

死んだメドューサの頭部の蛇のみ、あんなに踊るように動いているあの力強さは、ここからきてるのかなあなんて思って、皆さんに共有してみたくなりました。

 

蛇嫌いな人からしたら何とも気色の悪いポストとなりましたが、

美術マニアが全然違う新たな体験からまた勝手に絵を解釈してみたよ、というお話でございました。

 

追記:お土産として脱皮した皮が売ってありました。金運の守り神としてお財布にはさむ用に買うか、本気で悩みました。