美術館ログ 「あやしい絵展」編
「あやしい」って、どんな意味でしょう?
怖い、不気味、奇怪....
それだけではなく、広く深い意味でとらえた「あやしい」を、この展示会では見せてくれました。
妖艶で、エロティックで、グロテスクで、嫉妬深くて、神秘的で、同時に現実的すぎる。
おなかの底からぞわっとしたものを感じる絵もあれば、美しさに目を奪われる絵もありました。
この作品展のすごいところは、そのテーマ設定の斬新さもさることながら、取り扱っている作品の幅の広さです。浮世絵から始まり近代の日本画、西洋の象徴主義のころのポスターや本の挿絵、版画、抽象画、人形などなど。とにかく「あやしい」ものすべて。
画材も油彩から水彩、パステルにリトグラフなど多種多様。単純に、一度でこれだけ幅広く楽しめるんだからお得感満載です。
西洋作品ではミュシャの妖艶なポスターからビアズリーの奇々怪々な挿絵、ジョーンズの様々なマドンナ像をみずみずしい色彩で描いたフラワーブックなど、美しく、繊細で、なのにどこか薄気味悪さを感じる絵が並びます。
「美しきものには毒あり」まさにそんな雰囲気をまとった作品たちです。
日本の作品ではおどろおどろしいお化けや傷だらけの武将たちの浮世絵から始まり、リアルすぎてグロテスクさすら感じる稲垣仲静の「太夫」や、背景の色の深さと彼女たちの美しき青白い顔に何か勘ぐらずにはいられなくなる甲斐庄楠音の舞子たちの絵、さらにビアズリーの影響を受けその退廃的な画風を取り入れた雑誌の挿絵など、見どころ満載でした。
直視するには怖い、でも見ずにはいられないような...怖いもの見たさみたいな感覚がずっと背中にへばりついているような気持ちで展示室を進んでいったのを記憶しています。
場内はにぎわっていて、みなさん不可思議な妙な世界をたのしんでいました。
今は緊急事態宣言が出て休館中かと思われますが、解除の際は、感染対策をしっかりしてぜひあの独特な暗く深く幻想的で摩訶不思議な世界をぜひ体感してほしいです